林謙三 宛
|
尊書よく拝見─但再度の─仕候。然ニ船一条甚因循のよし御苦心御察申上候。別紙山﨑へ送り候間、内々御覧の上山崎へ御送り─但シ其封へのりを付て─奉願候。此上君をして船からでよの、なんのと云へバ、道理に於、私し不論を得不申」思ふニ唯君のミならず、久年積学、もふ此頃ハ船の一ツも、私より御渡し可申ハ当然の所なるを、御存の通の次第、ここに於ては私シ汗顔の次第なり。されバ此大極丸の一条ヘチヤモクレ、御一身おもしろくなしとくれバ、海援隊の名ハ身をよする所なれバ、持ておるがよろし。それとも幕へでも、薩へでも唯君をよろこび、君又天下に海軍を以てちからをのべたまふ所へ御出も、又御同意ニ候。もし是より又御進退の筋も在之候得バ、一通御達置可被遣候。前条の下の段申上候は再度の御書中ニ於御察申、御尤の御事と奉存候。先は早々、謹言。十一月十日龍 |
|
再度貴方の手紙を拝見しました。船の一条は甚だ因循なので苦心を察します。山崎へ送った別紙は内々で閲覧し、再度山崎へ送り返して下さい。ただし、封へのりを付けて下さい。この上、君(幕末時の流行語:貴方のこと)に船から降りろ、なんのと言えば、道理においておかしい。思うに、ただ君のみならず久年積学(長い期間学び)した皆に、船の一つでも私の方からお渡しするのが当然だけど、ご存知の通りの次第で、ここにおいては私は汗顔(苦り切った顔)の次第です。あと、大極丸の一件はヘチマもない(価値もない・取るに足らぬ)。私自身も面白くなく海援隊も身を寄せる場所もないので待つしかない。それと幕府へでも、薩摩へでも君の海軍の力を持って、その力を活かせる場所へ行くという話も私は賛成です。もし、これからまた貴方の進退のことがわかればご一報下さいませ。上記の下の段(自分の力を活かせる場所に行く)のことは、改めてもっともなことだと思います。まずは早々に。11月10日龍馬 |
坂本龍馬の手紙139通(現代翻訳文)一覧
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。