坂本乙女(姉) 宛
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扨も々、御ものがたりの笑しさハ、じつにはらおつかみたり。秋の日よりのたとへ、もつともおもしろし笑しと拝し申候。私事かの浮木の亀と申ハ何やらはなのさきにまいさがりて、日のかげお見る事ができぬげな。此頃、みよふな岩に行かなぐり上りしが、ふと四方を見渡たして思ふニ、扨々世の中と云ものハかきがら計である。 人間と云ものハ世の中のかきがらの中ニすんでおるものであるわい、おかし々。めで度かしこ。龍馬乙姉様御本猶おばあさん、おなんさん、おとしさんの御歌ありがたく拝し申候、かしこ猶去年七千八百両でヒイ々とこまりおりたれバ、薩州小松帯刀申人が出しくれ、神も仏もあるものニて御座候先日中、私の手本つがふあしく一万〇五百両というものハなけれバならぬと心おつかいしニ、不計も後藤象二郎と申人が出し出しくれ候。此人ハ同志の中でもおもしろき人ニて候。かしこ。 |
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さても、この物語のおかしさは、実にお腹をつかむくらい面白い。秋の日よりのたとえで、もっとも面白くておかしいと思います。あの浮木の亀というのは、何やら鼻の先に舞い降りてきたら日の影を見ることが出来ないでしょ。最近みょうな岩に行って登って、ふと四方を見渡してみると、さてさて世の中というのはカキの殻のようなものだと思った。 人間というものは世の中のカキの中に住んでいるようなものあるわい、あぁおかしい。龍馬乙女様なお、おばあさん、おなんさん、おとしさんの歌ありがたく頂戴しました。去年7800両でヒイヒイと困っていると薩摩の小松さんが出してくれて、神も仏もあるものですね。さらに、先日は都合悪く私の手元に10500両がなく、図らずも後藤象二郎という人が出してくれた。この人は同志の中でも面白い人でございます。 |
坂本龍馬の手紙139通(現代翻訳文)一覧
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