春猪(姪) 宛
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春猪どの々、春猪どのよ々。此頃ハあかみちやとおしろいにて、はけぬりこてぬり々つぶ しもし、つまづいたら、よこまちのくハしやのば〃あがついでかけ、こんぺいとふのいがたに一日のあいだ御そふだんもふそふというくらいのことかへ。をばてきのやんかんそふもこのごろハ、ちとふやり々と心も定めかねをりハすまいかと思ふぞや。たいての「なり候や、二町目へすてしめてもよかろふのふ。おまへハ人から一歩もたして、をとこという男ハ皆にげだすによりて、きづかひもなし。又やつくと心もずいぶんたまかなれバ、何もきづかいハせぬ。けれども、是からさきのしんふわい々ちりとりににてもかきのけられず、かまでもくわでもはらハれず、ふいぶん々せいだしてながいをとしををくりなよ。私ももしも死ななんだらりや、四五年のうちにハかへるかも、露の命ハはかられず。先々御ぶじで、をくらしよ。正月廿日夜りよふより春猪様足下 |
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春猪(姪)どの、春猪どの春猪どのよ、春猪どのよ。この頃は赤み茶(赤みがかった化粧)と白粉をはけ塗りで塗りつぶしても、もし転んでしまったら、横町のくわしや(火車のような顔)のばばあが寄ってきて、金平糖の鋳型(春猪のデコボコの肌)の顔をご相談に乗ろうかと言ってくるかもね。乙女姉さんの癇癪もこの頃は、少しはふわりふわりとしているのではと思うよ。姉さんの癇癪はたいていのことなので、二丁目へ捨ててしまっても良かろうのぉ(乙女姉さんを)。お前が一歩きするだけでも、男という男はみんな逃げだすだろうから気遣う必要もないね(誰も見てないよ)。また、生憎と心も随分としっかりしているので何も気遣いはいらないね。けれども、これから先のことは心配ですよ。塵取りでもかきのけられないように、鎌でも鍬でも払いのけられないように精を出して年齢を重ねていくようにね。私も、もし死ななければ4~5年のうちには家に帰れるかもしれないが、露ほどの命の行方はわからない。先々ご無事でお暮らしなさい。正月20日夜龍馬より |
坂本龍馬の手紙139通(現代翻訳文)一覧
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