坂本乙女 宛
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私がいぜんもつていました、かくなじでかいた烈女伝を、あれをひらがなになほしてゑ入にて、そのゑと申は、本の列女伝のゑのとふりなり。誠におもしろし。私がかなになをそふと兼ねてをもいしが、夫を見てやめてしもふたり。夫を─おまへさんになり─おくにへおくりたさにたづね候。けして今時の本やにはなきもの也。故にある女にたのみてかきうつさせより申候。其女と申はげにもめづらしき人、名は御聞しりの人なり。どうぞ々たのしみたまへ。その本のうつしたるれいとして、私しがうちでならひよりた、いしずりのかくなじのおりでほん─これはお前さんにあげておまへさんもならいよりた本なり。─夫を御こしなされ度、兄さんまでひきやくに御おくりなされ度候。またまた色々のものさし上候へども、夫はおい々なり。此龍がおにおふさまの御身をかしこみたふとむ所よくよくに思たまへ。乙大姉をにおふさま龍馬皆火中なり。此よふな文、なきあとにのこるははぢなり。 |
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私が以前持っていました、楷書で書かれた烈女伝(中国の古書)がありますよね。あれをひらがなに直して絵を入れたものがあって、その絵は烈女伝に関する絵で、本当に面白い。私がかな文字に直そうと思いましたが、それを見てやめてしまいました。それを貴方に送ることにしました。決していまどきの本屋にはないものですよ。ある女に頼んで書き写してもらいました。この女は本当に珍しい人で名前は多分聞いたことがある人ですよ。是非楽しみにしていて下さいね。その本を写してくれたお礼として、私が以前うちで習っていた、石硯(習字の硯)を使って書く文字の、折手本を渡したいと思います。これは姉さんにあげて姉さんも習っていた本です。それをこちらに送ってほしいので、兄さんに郵便にて送ってもらって下さい。また、こちらからも色々なものを送ってあげたいのですが、それはおいおい送りますね。龍馬が御仁王様(姉さんのこと:軽い悪口)の身をかしこまって尊ぶところをよくよく思い浮かべて下さい。乙女お姉鬼王様、龍馬や皆も、火中に置かれているくらい励んでいます。このような手紙は私が死んだあとに残るのは非常に恥ずかしく思います。 |
坂本龍馬の手紙139通(現代翻訳文)一覧
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