坂本乙女 宛(日本の洗濯)

坂本乙女 宛手紙

坂本乙女 宛(日本の洗濯)

原文
この文は極大事の事ばかりにて、けしてべちやべちやシヤベクリには、ホヽヲホヽヲいややの、けして見せられるぞえ。六月廿日あまりいくかゝきょうのひは忘れたり。一筆さしあげ申候。先日杉の方より御書拝見仕候。ありがたし。私事も、此せつはよほどめをいだし、一大藩によくよく心中を見込てたのみにせられ、今何事かでき候得ば、二三百人ばかりは私し預候得ば、人数きまゝにつかい申侯よう相成、金子などは少し入ようなれば、十、廿両の事は誠に心やすくでき申候。然に誠になげくべきことはながとの国に軍初り、後月より六度の戦に日本甚利すくなく、あきれはてたる事は、其長州でたゝかいたる船を江戸でしふくいたし又長州でたゝかい申候。是皆姦吏の夷人と内通いたし侯ものにて候。右の姦吏などはよほど勢もこれあり、大勢にて侯へども、龍馬二三家の大名とやくそくをかたくし、同志をつのり、朝廷より先づ神州をたもつの大本をたて、それより江戸の同志、はたもと大名其余段々と心を合せ、右申所の姦吏を一事に軍いたし打殺、日本を今一度せんたくいたし申候事にいたすべくとの神願にて候。此思付を大藩にもすこむる同意して、使者を内々下さる事両度。然に龍馬すこしもつかえをもとめず。実に天下に人ぶつのなき事これを以てしるべく、なげくべし。○先日下され候御文の内にぼうずになり、山のおくへでもはいりたしとの事聞へ、ハイハイエヘンおもしろき事兼て思い付おり申候。今時は四方そうぞしく候得ども、其ぼうずになり大極ゞのくされくされたるけさごろもをかたにかけ、諸国あんぎゃにでかけ候得ば、西はながさきより東はまつまえよリエゾまでもなんでもなく、道中銀は一文も用意におよばず。それをやろうと思えば先つねのシンゴンしゅうのよむかんおんきょう、イッコウしゅうのよむあみだきょう、これはちとふしがありてむかしけれど、どこの国ももんとがはやり申候あいだ、ぜひよまねばいかんぞよ。おもしろやおもしろや、おかしやおかしや。それよりつねにあまのよむきょう一部、それでしんごんの所へいけばLんごんのきょう、いっこうしゅうへいけばいっこうしゅうのきょうをよみ、─これはとまるやどの事にて候。ほうだんのような事もしんらんしょうにんのありがたきおはなしなどする也。─いたし、まちを。ひる。おうらい。すればきょうよみよみゆけば、ぜには十分とれるなり。これをぜひやれば。しっかり。おもしろかろうと思い申候。なんのうきよは三文五厘よ。ぶんと。へのなる。ほど。やって見よ。死だら野べのこつは白石チヽリヤチリチリ此事は必々一人りでおもい立事のけして相ならず候。一人りでいたりやこそ─龍ははやしぬるやらしれんきにすぐにとりつく。─それは々おそーしいめを見るぞよ。これをやろうと思えばよく人の心を見さだめなくてはいかん。おまえもまだわかすぎるかと思うよ。
現代文
この手紙はとても大事なことばかりなので、決して饒舌にしゃべったり人に見せてはいかんよ。6月20日くらいか、何日か今日の日は忘れました。一筆書きますね。先日杉の方(恐らく池内蔵太の実家)からお手紙を頂きましてありがとう。私も最近はいくばくか目を出し(出世し)、大きな藩の大名(越前藩の松平春嶽)にも心意気を見込まれ、今何事か起これば2・3百人くらいは自分が預かり、人も思うように動かすことが出来るようになりました。そのため、お金が入用な時も10両・20両くらいならどうにかできるようになりました。ですが、本当に嘆くべきことは長州での戦争が始まり(馬関戦争)、来月は6度目の戦で日本には利益などなく、あきれ果てることに、長州での戦いで破損した外国の船を江戸にて修理しているのです。これらはみな悪辣な幕府の役人が外国と内通している。このような幕府の要役人達の勢いはありますが、私や3家の大名(越前・肥後・土佐)は固い約束をして同志を募りまず朝廷から日本を守る方針を建て、それから江戸の同志や、旗本、大名これらと徐々に心を合わせ、これらの悪辣な役人達と戦をして、日本を一度洗濯したいと思ってます。この考えに大きな藩もすこぶる同意して下さり、使者を内々に送ってくれることも2度程ありました。しかし、私には仕官するつもりは少しもありません。実に天下に人物がいないことは嘆くことです。先日届いた姉さんの手紙の中に、坊主になって山奥へ入りたいと書いてありましたが、ハイハイ、エヘン(上目線で)実に面白いことを考えてるんですね~。最近は四方に騒々しい世の中だけど、坊主になれば超汚れ腐った袈裟衣を肩にかけて、諸国あんぎゃに出かけて西は長崎から、東は松前(北海道)より蝦夷までも、道中お金は一銭も用意しなくても平気だよー。それをやろうと思うなら、まず、真言宗の観音経や一向宗の読む阿弥陀経を読まないと。ちょっと難しいけどどこの国の門徒でも流行ってるから読まなきゃならないよ。あーおもしろい、おもしろい、おかしい、おかしい、それより尼さんの読むお経のことだけど、真言宗のところへ行けば真言のお経、一向宗のところへ行けば一向宗のお経を読むんだよ(これは泊まる宿の話ね:それを読めば泊めてくれる)または法談のような事も必要で、そんときは親鸞上人のありがたいお話などをするんだよ。だけど、町を昼に往来してお経を読んでれば、お金は十分もらえるよ。これをしっかりとやることだね、あんまり面白いとか思いなさんなよ。なんの浮世は三文五厘よ。おおいに屁が出るほどやってみてよ。死んだら火葬場の骨はただの白石。チチリヤ・チリチリみたいな感じだよ。このことは必ず一人でやってはいけないよ一人でやったら、龍馬は早めに死ぬと思うからすぐに姉さんにとりつくぞー。だからそれはそれは恐ろしい目にあいますからね。(龍馬は早死にすると自分で思っていた)また、これ(尼さん)をやるなら美人な人を連れたりしてはいけないよ。ごつごつしてる強情おばさんでなければいけないね。袋に短砲を入れて、2人~3人で出かけて、万一の時は、グワーンと発砲して盗賊の金玉まで吹き飛ばして下さい。龍馬を決して長い命と思うことは止めて下さい。けれど、私は人並みのように中々死ぬものではありません。私が死ぬ日は、天下が大変な時に役にも立たず、この世に存在していても意味がないようにならないと、私は中々ずるいので死なないよ。けれど、土佐のイモ掘りとも言えぬような、居候の身で、一人で天下を動かすべきことは、これまた天がさせることです。そうは言っても決してつけあがりはせず、ますます潜り込んで泥の中のしじみのように常に鼻の先を土につけ、砂を頭にかぶり慢心してはいないのでご安心下さい。すなわちこれ「穴かしこ」ですね。(穴かしこ = 手紙の最後に使う締め言葉。締め言葉と、賢いという意味の「かしこ」を掛け合わせた頓知?)直陰(龍馬の実名)いつも姉さんの傍にいる龍馬より今日は後で聞けば6月29日のようですね、天下第一の大荒くれ先生(姉さん)を始め、春猪(龍馬の姪「きくめ石=サンゴの一種」ニキビ顔の姪)にも宜しく、乳母にもそれから春猪の世話人にも宜しく。徳増屋にいた紺屋の娘にも宜しく。そして、平井収二郎は本当に切腹か?むごいむごい。妹のお加尾さんはどれほど嘆いていることか、少々私の様子などを話してあげて下さい。いまだに、少し心配しています。下町の豆造ももう体を壊したりしてないかい?元気かな、まだ気にかかる。※平井収二郎土佐藩の上士で武市半平太を中心とする土佐勤王党に参加し、尊王攘夷運動の奔走する。山内容堂による土佐勤皇党弾圧により切腹させられた。(ちなみに収二郎の妹は龍馬初恋の女性)

坂本龍馬の手紙139通(現代翻訳文)一覧

坂本八平(父)宛(最古の手紙)
相良屋源之助 宛
坂本乙女 宛
住谷寅之助・大胡聿蔵 宛
清井権二郎 宛
平井かほ 宛(龍馬初恋の人への手紙)
田中良助 宛(借金借用の手紙)
坂本乙女 宛(脱藩後初の手紙)
坂本乙女 宛(エヘンの手紙その一)
内蔵太の母 宛
坂本乙女 宛(日本の洗濯)
村田巳三郎宛
坂本乙女 宛(姉乙女に千葉佐那を紹介)
川原塚茂太郎 宛(坂本家の養子縁組依頼)
坂本乙女・春猪 宛(天誅組の蜂起失敗をあわれむ)
坂本乙女 宛
勝海舟 宛(黒龍丸のこと)
渋谷彦介 宛
池内蔵太宛
坂本乙女 宛
坂本権平・乙女・おやべ(春猪) 宛(桂小五郎なるものあり)
乙女・おやべ(春猪) 宛
池内蔵太家族 宛
坂本乙女 宛
坂本乙女 宛
池内蔵太 宛
印藤聿 宛
印藤聿 宛
岩下佐次右衛門・吉井友実 宛
印藤聿 宛
池内蔵太家族 宛
印藤聿 宛
木戸孝允 宛
木戸孝允 宛
高松太郎 宛
幕府要人 宛
佐井虎次郎 宛
お龍 宛
品川省吾 宛
坂本乙女 宛
桂小五郎 宛
桂小五郎 宛
三吉慎蔵 宛
森玄道・伊藤助太夫 宛
森玄道・伊藤助太夫 宛
三吉慎蔵 宛
渡辺昇 宛
吉井友実 宛
坂本春猪 宛
溝渕広之丞 宛
溝渕広之丞 宛
寺田屋お登勢 宛
坂本権平・一同 宛
坂本権平 宛
坂本乙女 宛
桂小五郎 宛
伊藤助太夫 宛
桂小五郎 宛
久保松太郎 宛
伊藤助太夫 宛
春猪(姪) 宛
坂本乙女(姉) 宛
お登勢 宛
お登勢 宛
桂小五郎 宛
河田佐久馬 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
印藤聿 宛
三吉慎蔵 宛
坂本春猪(姪) 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助大夫 宛
坂本乙女(姉) 宛
坂本乙女(姉) 宛
お登勢 宛
菅野覚兵衛・高松太郎 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
伊藤助太夫 宛
三吉慎蔵 宛
長岡謙吉 宛
寺田屋伊助 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
高柳楠之助 宛
高柳楠之助 宛
お龍(妻) 宛
伊藤助太夫 宛
伊藤助太夫 宛
伊藤助太夫 宛
小谷耕蔵・渡辺剛八 宛
伊藤助太夫 宛
桂小五郎 宛
乙女・おやべ(姉 姪) 宛
坂本権平(兄) 宛
望月清平 宛
高松太郎(甥) 宛
お登勢 宛
長岡謙吉 宛
坂本権平(兄) 宛
三吉慎蔵 宛
陸奥宗光 宛
岡内俊太郎 宛
岡内俊太郎 宛
岡内俊太郎 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
安岡金馬 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
長崎奉行 宛
陸奥宗光 宛
佐佐木高行 宛
桂小五郎 宛
渡辺弥久馬 宛
本山只一郎 宛
坂本権平(兄) 宛
後藤象二郎 宛
後藤象二郎 宛
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望月清平 宛
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岡本健三郎 宛
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順助(高松太郎変名) 宛
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